投資をする際に節税効果を得られる制度として、NISA・つみたてNISA(積立NISA)・iDeCo(イデコ)といった制度がありますが、それぞれの違いとは一体何でしょうか?
それぞれの制度にははどのような違いがあり、どれを利用するのがおすすめでお得なのか比較してみました。
NISA・つみたてNISA(積立NISA)・iDeCoの概要
NISAとは?
NISAとは、2014年1月にスタートした、個人投資家のための税制優遇制度で、毎年120万円の非課税投資枠が設定され、株式・投資信託等の配当金や分配金・譲渡益が非課税対象となる制度です。
通常株式や投資信託に投資をしてこれらを売却して得た利益や、受け取った配当金や分配金には約20%の税金がかかりますがこの税金がかからなくなります。
国内に住んでる20歳以上が対象(未成年者を対象としたジュニアNISAもあります)で、非課税対象となる商品が多く国内・海外株式や投資信託、国内・海外ETFなども対象となります。
参考 NISAとは?メリット、デメリットを理解して有効に使おう!
2024年からNISAは新しくなりますが、ジュニアNISAは新規口座開設期間は2023年までとなり、制度が終了となります。
つみたてNISA(積立NISA)とは?
つみたてNISAは2018年からスタートした、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。
毎年40万円の非課税枠が設定され、つみたてNISA対象となる投資信託(一部ETF含む)から得られる分配金や譲渡益が非課税となる制度です。
非課税期間が20年と長く、買付の方法が積立投資に限定されていて、信託報酬が低く販売手数料も0円(ノーロード)の低コストな商品に限定されていて、毎月分配型のように頻繁に分配金を出す商品は対象外となっています。
iDeCo(イデコ)とは?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、より豊かな老後の生活を送るための資産形成方法の一つとして位置づけられているので、NISAやつみたてNISAとはちょっと毛色が違う制度となっています。
それでも、基本的に20歳以上60歳未満の全ての方が加入でき、iDeCo用の投資信託・預金・保険に投資ができ、「支払った掛金」「運用利益」「将来受け取る一時金や年金」それぞれで税制上の優遇があります。
掛金は加入区分によって下記の様に限度額が決められています。
(引用元:国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
参考 iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリット・デメリットは?年利30%の投資手法?
NISA・つみたてNISA・iDeCoの比較
対象者
NISA、つみたてNISAは日本在住の20歳以上の方が対象(どちらか1口座)で、iDeCoは20歳以上60歳未満の方(※)が対象です。
※企業型確定拠出年金に加入している方は、企業型年金規約で個人型確定拠出年金(iDeCo)に同時に加入してよい旨を定めている場合のみ。また2022年10月より規約変更なしでも併用が可能なり、2022年5月からは加入可能年齢は65歳未満となる予定。
以前はiDeCoは加入対象者が限定されていましたが、2017年1月の法改正により加入対象者が大幅に緩和され、だれでも加入できるような仕組みに生まれ変わっています。
最低投資金額
NISA、つみたてNISAは金融機関によりますが、下記のネット証券で投資信託なら100円から投資ができるので気軽に始めることができます。
iDeCoの最低投資金額は5,000円からとなっています。
投資限度額(年間)
NISAは120万円、つみたてNISAは40万円、iDeCoは加入者の職業によって14万4,000円~81万6,000円となっています。(NISAは2024年以降は投資限度額が変更されます)
NISAが1年間での投資限度額は大きいですが、下記の運用可能期間と合わせて検討する必要があります。
また、各制度ともに限度額を使い切らなかったら次の年に繰り越すといったことはできません。
例えばNISAで、ある年に100万円分投資をすると、20万円分の非課税枠が余ることとなりますが、翌年140万円分の投資ができるわけではなく、120万円分の限度額までしか投資することができません。
運用可能期間
NISAは5年間(ロールオーバーで最長10年間)、つみたてNISAは最長20年間、iDeCoは70歳までで、投資可能期間はNISAは、2014年~2023年、つみたてNISAは2018年~2037年、iDeCoは60歳までとなっています。(NISAは2024年以降は新制度に、つみたてNISAは2042年までに変更となります)
投資限度額と合わせた投資総額は、NISAは600万円、つみたてNISAは800万円、iDeCoは職業や年齢による、といった感じとなります。
投資対象商品
NISAで投資できる金融商品は、国内・海外株式、投資信託、国内・海外ETF、国内・海外リート、新株予約権付社債(ワラント債)など多岐にわたります。
つみたてNISAの投資対象は、金融庁が定めた投資信託(ETF含む)となっていて、信託報酬が低く販売手数料も0円(ノーロード)の低コストな商品に限定されています。
iDeCoでの投資対象は各金融機関で異なり、iDeCo用の投資信託など以外に、定期預金や年金保険のように元本保証された商品にも投資することができます。
資金の引出し
資金の引出しは大きな違いの1つで、NISAやつみたてNISAは投資した金融商品はいつでも売却して引き出すことができますが、iDeCoは基本的には60歳(※)になるまで資金を引き出すことはできません。
※50歳を超えてから加入した場合、受取り可能年齢が最大65歳となります
iDeCoは60歳まで引き出し自体出来ないので、急な出費などに対応ができないので余裕資金で行うことは必要ですが、強制的に60歳まで貯めることができるといったメリットもあります。
投資方法
NISAでの投資方法は自由で、一括でも積立でも好きなように投資を行うことができます。
つみたてNISAは原則積立のみで下記の様にネット証券ごとに積立方法が異なり、SBI証券、楽天証券は柔軟な設定が可能となっています。
証券会社 | 毎月 | 毎週 | 毎日 | ボーナス月 |
SBI証券 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
楽天証券 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
マネックス証券 | 〇 | × | 〇 | × |
松井証券 | 〇 | × | × | × |
iDeCoは毎月~年1回の積立を設定することができ、最低年1回の拠出が必要です。
節税効果
NISAやつみたてNISAは運用収益に対して非課税となるメリットがあり、iDeCoも運用収益に対して非課税となりますが、それに加えて積立額の全額が所得控除され、住民税と所得税を軽減させることができます。
また、iDeCoは60歳以降に受け取るときには課税対象となってしまうのですが、受け取る方法が一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。
まとめると下記の様になります。
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
拠出時 | 所得控除なし | 全額所得控除 | |
運用時 | 非課税 | ||
受取時 | 課税なし | 課税あり (退職所得控除、公的年金等控除が適用) |
銘柄の入れ替え
NISAやつみたてNISAでは、銘柄の入れ替えやスイッチングを行う場合は保有株式・投資信託の売却、および新規購入という扱いになり、新規購入時点で未使用の非課税枠を使うこととなり、売却した資金分の非課税枠は再利用されません。
iDeCoは既に投資している金融商品を売却して、他の金融商品への入れ替えは自由に行うことができますが、投資信託を売却する際には投資信託によっては信託財産留保額というコストがかかる場合があるので、売却する際には注意が必要です。
投資金額の変更
NISA、つみたてNISA、iDeCoともに投資金額の変更は可能ですが、iDeCoは年1回のみ変更することができます。
手数料(口座管理料)
NISA、つみたてNISAを利用するのに別途手数料などは必要ありませんが、iDeCoは手数料が必要となり金融機関によって異なります。
iDeCoの運用期間中にかかる毎月の手数料は、下記の様になっていて必ず必要となる手数料と金融機関によって異なる手数料の2つがあります。
- 国民年金基金連合会:103円(税込)
- 事務委託先金融機関:64円(税込)
- 運営管理機関手数料:金融機関によって異なる
ネット証券ならSBI証券、楽天証券、マネックス証券は運営管理機関手数料を無料としているので、このような金融機関を選べばコスト削減となります。(どの金融機関でも初回に2,777円(税込)を支払う必要があります)
iDeCoのみ手数料がかかりますが、掛金が全額控除となる節税効果の方がメリットは大きいです。
まとめ
節税効果を得られる制度であるNISA、つみたてNISA、iDeCoの比較のまとめは下記の様になります。(2023年まで)
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
対象者 | 日本在住の20歳以上 | 20歳以上60歳未満 | |
最低投資金額 | 100円 | 5,000円 | |
投資限度額(年間) | 120万円 | 40万円 | 14万4,000円~81万6,000円 |
運用可能期間 | 5年(最長10年) | 20年 | 70歳まで |
投資可能期間 | 2014~2023年 | 2018~2037年 | 60歳まで |
投資対象商品 | 国内・海外株式、 投資信託、 国内・海外ETFなど | 金融庁が定めた 投資信託、ETF | 一部の投資信託、 定期預金、年金保険 |
資金の引出し | 自由 | 60歳から | |
投資方法 | 自由 | 毎月など 定期的な購入 | 毎月~年1回 |
節税効果 | 運用収益 | 運用収益 | 運用収益 所得控除(拠出時) 退職所得控除、 公的年金等控除(受取時) |
銘柄の入れ替え | 自由 (非課税枠の再利用不可) | 自由 | |
投資金額の変更 | 自由 | 自由 (年1回変更可能) | |
手数料 | 無料 | 初回:2,777円 運用時: 毎月167円+運営管理機関手数料 |
節税効果が大きいのは掛金が全額所得控除されるiDeCoで、NISAやつみたてNISAの利用状況に係わらず多くの方が利用できるので是非とも活用したい制度で、掛金の全額所得控除だけでも下記のような節税効果が期待できます。
ただ、iDeCoのデメリットとして60歳までは資金が引き出せないので、余裕資金で行うことは必要です。
また、投資信託の様に元本が保証されないのが不安であれば、運用収益による非課税メリットはなくなりますが、元本保証の定期預金を選べば掛金の全額所得控除のメリットは享受できます。
NISAとつみたてNISAはどちらか一方しか選ぶことができませんが、長期での資産運用に適しているのは運用可能期間が長いつみたてNISAの方がメリットがあります。
株式など投資信託以外の投資を行いたい方や、より多くの金額を運用したいのであればNISAの方が投資対象となる金融商品も多く非課税枠も大きくメリットがあります。
iDeCo+NISA、iDeCo+つみたてNISA、それぞれの制度のどれか1つといった選択肢がありますので、ご自身の投資スタイルに合った制度をうまく活用してみてください。
iDeCoにおすすめの証券会社
iDeCoは銀行や生保、証券会社などで始めることができますが、手数料が無料で取り扱っている投資信託も多いネット証券がおすすめで、特にSBI証券、楽天証券、マネックス証券では手数料は条件なく無料となっているので、この中から選べばコストを削減することができます。
各証券会社で取り扱っている投資信託本数は下記の様になっていて、SBI証券が数も多くいろいろな商品を取り扱っています。
SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | ||
セレクト | オリジナル | |||
投資信託 | 36本 | 37本 | 31本 | 26本 |
元本確保型 | 1本 | 1本 | 1本 | 1本 |
※2020年11月時点
SBI証券は「セレクトプラン」と「オリジナルプラン」がありますが、「オリジナルブラン」はiDeCoサービス提供開始時からのプランで、制度変更による商品数の上限を満たすように商品の見直しがされているプランで、「セレクトプラン」の方が新しく、信託報酬が低コストな投資信託が揃っているので、これから新規に始めるのであれば「セレクトプラン」がおすすめです。
SBI証券のiDeCo
SBI証券の「セレクトプラン」では信託報酬が常に業界最低水準の信託報酬となることが期待できる「eMAXIS Slimシリーズ」やニッセイの「<購入・換金手数料なし>シリーズ」など低コストな投資信託を取り扱っています。
米国の代表的なインデックスであるS&P500に投資する「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や、日本を含む先進国25ヵ国と新興国23ヵ国と全世界の株式に分散投資ができる「SBI・全世界株式インデックス・ファンド」なども取り扱いがあります。
まだSBI証券の証券総合口座を持ってないなら口座開設後に、証券総合口座の登録情報より簡単に資料請求できます。
>> SBI証券(公式サイト)
iDeCoの資料請求のみなら下記からも行えます。
>> SBI証券(iDeCo)(公式サイト)
楽天証券のiDeCo
楽天証券では低コストで運用面で定評がある「たわらノーロードシリーズ」を中心に、直販投信で有名なセゾン投信の2本のファンドを取り扱っています。
参考 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンドの評価ってどう?
参考 セゾン資産形成の達人ファンドの評価ってどう?コストは高い?
また、超低コストなバンガード社の海外ETFを実質投資対象とする楽天・バンガード・ファンドシリーズである「楽天・全米株式インデックス・ファンド」「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」を取り扱っています。
楽天証券では証券総合口座とiDeCo口座は1つのIDで管理ができます。
>> 楽天証券(公式サイト)
マネックス証券のiDeCo
マネックス証券ではSBI証券同様に、信託報酬が常に業界最低水準の信託報酬となることが期待できる「eMAXIS Slimシリーズ」を中心に、信託報酬が低コストな「たわらノーロードシリーズ」など低コストな投資信託を取り扱っています。
特に米国のインデックスであるNYダウ、S&P500、Nasdaq100をベンチマークとするインデックスファンドの取り扱いがあります。
参考 たわらノーロード NYダウの評価ってどう?過去の成績は?
参考 eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の評価って?つみたてNISAやiDeCoの対象?
参考 iFreeNEXT NASDAQ100インデックスの評価って?つみたてNISAやiDeCoは利用できる?
まだマネックス証券の証券総合口座を持ってないなら口座開設後に、証券総合口座の登録情報より簡単に資料請求できます。
>> マネックス証券(公式サイト)
iDeCoの資料請求のみなら下記からも行えます。
>> マネックス証券 (公式サイト)
NISAにおすすめの証券会社
証券会社によってはNISAの口座での手数料特典があるのですが、おすすめの特典がある証券会社は下記となります。
SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 | ||
国内株式・ETF | 無料 | |||
海外株式・ETF | 個別株(買付時手数料) | ー | ー | 全額 キャッシュバック |
個別株(売却時手数料) | ー | ー | ー | |
ETF(買付時手数料) | 無料 | 全額 キャッシュバック | 全額 キャッシュバック | |
ETF(売却時手数料) | ー | ー | ー |
米国株や中国株などの個別株に投資をしたいならマネックス証券が買付手数料が実質無料なのでお得です。
>> マネックス証券 (公式サイト)
>> SBI証券(公式サイト)
>> 楽天証券(公式サイト)
つみたてNISAにおすすめの証券会社
つみたてNISAは、金融庁が定めた投資信託(ETF含む)のみが投資対象となっていて、信託報酬が低く販売手数料も0円(ノーロード)の低コストな商品に限定されています。
このようなファンドを多く扱っている下記の証券会社がおすすめで、積立方法は毎月や毎日の設定を行うことが可能です。