株式や投資信託から得られる利益には配当期・分配金と譲渡益の2つがありますが、これらにはそれぞれもちろん税金がかかります。
証券会社の特定口座の種類によっては確定申告が不要だけど、確定申告すれば節税できる場合があるなど複雑なので、株式や投資信託の税金や、確定申告すれば得する場合などまとめたいと思います。
参考 特定口座については下記も参考にしてみてください。
⇒ 特定口座とは?証券会社の口座種類のまとめ!結局どれがいい?
株式や投資信託の利益に対する税金って?
まず投資信託は公社債投資信託と株式投資信託の2つに分けられます。
公社債投資信託とは、投資対象を国債、地方債、社債等に限定し、株式を一切組入れない投資信託のことで、MMFやMRFが代表的な公社債投信です。
それ以外は株式投資信託となり、国内債券にしか投資しない投資信託でも実際には株式の組み入れはなくとも、投資信託約款の投資対象に株式が含まれていれば、株式投資信託に分類されます。
例えば、「ニッセイ国内債券インデックスファンド」のように債券にしか投資しないファンドでも目論見書には下記の様に記載があり、株式投資信託に分類されます。
公社債投資信託と株式投資信託で税率などが異なっていましたが、2016年1月より金融所得課税の一体化により、公社債投資信託と株式投資信託とでは税法上はあまり違いがなくなりましたが、「元本払戻金」や「配当控除」などの違いもあるので、お持ちの投資信託がどちらに分類されるかは確認しておくといいかと思います。
所得の種類とは?
まず所得は、所得税法で下記10種類に分類されています。
所得の種類 | 概要 |
利子所得 | 公社債や預貯金の利子、貸付信託や 公社債投信の収益の分配などから生じる所得 |
配当所得 | 株式の配当、証券投資信託の収益の分配、 出資の剰余金の分配などから生じる所得 |
不動産所得 | 土地や建物などの貸付けなどから生じる所得 |
事業所得 | 事業から生じる所得 |
給与所得 | 給料・賞与などの所得 |
退職所得 | 退職によって受ける所得 |
山林所得 | 山林を伐採したものなどを譲渡した場合に生ずる所得 |
譲渡所得 | 事業用の固定資産や家庭用の資産などを売った所得 |
一時所得 | 上記8つに当てはまらない、一時的な所得 例:法人から贈与された金品、懸賞など |
雑所得 | 上記9つに当てはまらない所得 例:印税、公的年金など |
株式の利益となる売却益は「譲渡所得」、配当は「配当所得」に分類されます。
投資信託の利益となる売却益や解約益、償還差益などは「譲渡所得」、分配金は「利子所得」もしくは「配当所得」に分類されます。
課税方法は?
所得に対する課税方法は「分離課税」「総合課税」の2つがあります。
ある所得を他の所得と合算せずに、別々に分けて課税すること。
分離課税はさらに「申告分離課税」「源泉分離課税」に分けられます。
各種の所得を合計して所得税の金額を計算すること。
株式や投資信託の利益となる売却益や解約益、償還差益は申告分離課税、配当金・分配金は源泉分離課税となります。
株式や株式投資信託の分配金は、「申告分離課税」「総合課税」「申告不要」を、公社債投資信託の分配金は、「申告分離課税」「申告不要」を選択することができます。
また、投資信託で毎月分配型ファンドのように元本の払戻金となる特別分配金には課税されませんので、分配金に対する税金が少ないなと思ったら、ファンドの運用による儲けが出ていないということになります。
主な金融商品の課税方法との違いは?
金融商品 | 所得種類 | 課税方法 | 税率(※1) |
---|---|---|---|
株式 (売却益) | 譲渡所得 | 申告分離 | 20% |
株式 (配当) | 配当所得 (※2) | 源泉分離 | 20% |
投資信託 株式投資信託 (売却益など) | 譲渡所得 | 申告分離 | 20% |
投資信託 株式投資信託 (分配金) | 配当所得 (※2) | 源泉分離 | 20% |
投資信託 公社債投資信託 (売却益など) | 譲渡所得 | 申告分離 | 20% |
投資信託 公社債投資信託 (分配金) | 利子所得 (※3) | 源泉分離 | 20% |
FX(※4) | 雑所得 | 申告分離 | 20% |
ソーシャルレンディング (分配金) | 雑所得 | 総合課税 | 15%~ 55% |
※2:申告分離課税・総合課税・申告不要を選択できます。
※3:申告分離課税または申告不要を選択できます。
※4:決済ポジションのみ対象。未決済ポジションのスワップポイントはFX会社によって異なります。
参考 FXの未決済ポジションのスワップポイントについては下記も参考にしてみてください。
⇒ FXのスワップポイントとは?2国間の金利差を低リスクで日々もらうには?
投資信託の税金については、2016年1月より金融所得課税の一体化によって公社債投資信託と株式投資信託・株式についてはほとんど税法上の違いはなくなり、配当金・分配金(特別分配金を除く)は源泉分離課税で利益の約20%が源泉徴収済のため申告は不要、売却益や解約益、償還差益などは約20%の申告分離課税となるので、申告が必要ということになります。
損益通算とは?
損益通算とは、複数の所得の利益と損失をまとめることができる仕組みで、株式の売却益や配当などと、投資信託の売却益や分配金をまとめることができます。
例えば、下記のような場合を考えてみます。
- 株式の売却益がー50万円
- 投資信託の売却益が+40万円
- 投資信託の分配金が+20万円の場合
投資信託の売却益40万円+投資信託の分配金20万円
=60万円×20%=12万円が税金
株式の売却益ー50万円+投資信託の売却益・分配金60万円
=10万円×20%=2万円が税金
※税率は実際には復興所得税が課されるので20.315%となります。
このように損益通算によって、損失が出ていた場合は、他の利益が出ている金融商品と合算することによって節税することができます。
ただし、株式の配当金や投資信託の分配金は、源泉徴収されてしまっているので、損益通算の対象とするためには確定申告で「申告分離課税」を選択する必要があります。
また、損益通算できる金融商品はグループ分けがされていて、主な金融商品のグループ分けは下記となります。
上場株式等・ 特定公社債等グループ |
国内株式 (ETF、REIT含む) |
外国株式 | |
投資信託 | |
特定公社債 (国債、地方債、外国国債、公募公社債等) |
|
デリバティブグループ | FX(取引所・店頭) |
商品先物取引 | |
株価指数先物 | |
有価証券先物取引(日経225miniなど) | |
オプション取引 | |
上場カバードワラント |
※ソーシャルレンディングの分配金は総合課税となるため、上記のグループ分けには入りません。
参考 ソーシャルレンディングの税金って?確定申告は必要になる?
譲渡損失の繰越控除とは?
繰越控除とは、その年に控除しきれなかった損失を最大3年間にわたって繰越して利益と通算できる制度です。
(引用元:大和証券)
ただし、繰越控除を受けるためには、損失が出た翌年だけでなく、損失額がなくなるまで最大3年間連続して確定申告する必要があります。(取引が全くない年でも損失の繰越控除用の書類を添付した確定申告書が必要になります)
配当控除とは?
株式の配当や株式投資信託の配当金を受け取った人は、確定申告で「総合課税」を選択することによって、配当控除を受けることができ特定の条件の場合、20%の源泉徴収された税金を取り戻せる場合があります。
ただし、「総合課税」で納付することとなるので、損益通算は利用できなくなります。
NISA口座ならもちろん非課税
NISA口座は年間120万円までの投資における株式や投資信託の売却益、配当金・分配金が非課税となる制度です。
参考 NISAとは?メリット、デメリットを理解して有効に使おう!
NISA口座での取引ならどれだけ利益が出ていても非課税となりますが、期間が最大でも10年間までとなることや、損失がでても他の口座との損益通算は出来ないので、IPOなど値が上がる確率が高いものを取引するのがおすすめです。
参考 株初心者でも利益が出やすいIPO投資とは?誰でも稼げるって本当?
確定申告すると得になる場合とは?
確定申告しなくてもいい条件とは?
確定申告をしなくてもいい条件は、
給与所得者で、
- 年収2,000万円未満
- 給与所得が1ヶ所のみ
- 給与所得以外の収入が20万円未満
もしくは、主婦や学生、個人事業主等で収入が38万円未満
上記の条件を満たす方は、確定申告をする必要はありません(住民税の申告は必要です)。
また、証券会社の口座で「NISA口座」のみ、「源泉徴収あり特定口座」のみで運用している場合も確定申告は必要ありません。
「NISA口座」はもちろん非課税なので確定申告は必要ありませんが、「源泉徴収あり特定口座」の場合も、証券会社が口座内の損益通算をしたうえで納税してくれるので確定申告は必要ありません。(住民税の申告も必要ありません)
(引用元:東海東京証券)
ただし、損益通算するには証券会社ごとに方法が異なりますが、SBI証券の場合は、配当等通算受入(自動損益通算)で「特定口座(源泉徴収あり)に配当等を受け入れる」に設定し、配当金受領サービスを「株式数比例配分方式(証券会社での受取)」にする必要があります。
参考 特定口座については下記も参考にしてみてください。
⇒ 特定口座とは?証券会社の口座種類のまとめ!結局どれがいい?
確定申告をした方がお得になる場合とは?
- 株式や投資信託の売却で損失が出ていて、配当金・分配金を損益通算する場合
- 損益通算しても損失となっている場合
- 複数の証券会社間で損益通算したい場合
- 配当控除を受けたい場合
株式や投資信託の売却で損失が出ていて、配当金・分配金を損益通算する場合
株式や投資信託を売却して損失がでていて、配当金・分配金を申告分離課税として確定申告すれば損益通算の対象とすることができます。
例えば下記の場合、
- 株式の売却益がー50万円
- 投資信託の売却益が+40万円
- 投資信託の分配金が+20万円の場合
分配金も損益通算対象とすれば、上記で算出したように税金は2万円ですみます。
確定申告が面倒だから分配金はそのままとすると、
- 投資信託の分配金20万円×20%=4万円の税金(源泉徴収済)
- 株式の売却益ー50万円+投資信託の売却益40万円
=-10万円なので税金はなし
上記のように2万円の税金を余分に納めることとなるので、確定申告をした方が節税になりますが、「源泉徴収あり特定口座」の場合は株式や投資信託の売却益は確定申告が不要なので、配当金や分配金の額が小さい場合はそのままという人が多そうです。
損益通算しても損失となっている場合
損益通算しても損失が残っている場合、最大3年間その損失を繰越控除することができます。
すぐに節税につながるわけではありませんが、のちのちの節税につながるので確定申告しておくことをおすすめします。
複数の証券会社間で損益通算したい場合
「源泉徴収あり特定口座」の場合、証券会社が代わりに納税してくれますが、複数口座を保有している場合、確定申告することによって別の特定口座や一般口座と損益通算することが可能です。
参考 ネット証券に複数の口座開設するメリット、デメリットは?
例えば、A証券で10万円の利益がでていて、B証券ではー30万円の損失となっていた場合、A証券では「源泉徴収あり特定口座」となっていれば自動的に2万円の税金を支払った残りの8万円が振り込まれます。
ただ、確定申告をすることによってB証券のー30万円の損失と損益通算できるので、A証券で自動で課税された税金を取り戻すことができます。
配当控除を受けたい場合
配当控除を受けるには、「総合課税」で納税しなければいけないので、損益通算と同時に利用することはできません。
配当を総合課税にして得する場合は、下記の場合です。
- 配当所得を含めた課税所得の合計が695万円を下回る場合(サラリーマンの場合、年収約900万円程度)
- 配当所得以外の所得がない専業主婦など、所得の合計が38万円を下回る場合
配当は、口座に振り込まれる時点ですでに20%の源泉徴収済となっていますが、配当控除後の負担率は、
- 課税所得が330万円以下:7.2%
- 課税所得が330万円超え695万円以下:17.2%
となるので、源泉徴収されている分との差額が還付されるので節税となります。
逆にこの条件以外の方が確定申告をすることによって、追加で税金を納める必要が出てくるので気を付けてください。
確定申告したら会社にばれる?
副業禁止の会社に勤めている方など、確定申告をすることによって会社にばれてしまうことを気にされている方もいるかと思います。
ただ、確定申告をした場合に役所の人為的なミスなどが起こる可能性があるので、完全に会社にばれることを防ぐ手段というのはないのですが、下記を行うことによりばれる可能性を低くすることができます。
- 確定申告時に「住民税に関する事項」の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」を選ぶ
- 自治体にこの分は普通徴収でお願いしますと連絡しておく
参考 証券会社やFX会社にマイナンバーを提出したら会社にばれる?注意点は?
税務上の不明点は勝手に判断しないことが重要
株式や投資信託だけでなく、金融商品での税金関係の処理は複雑です。
不明点などがあったら勝手に判断せずに、税務署や税理士に相談するのがおすすめです。
確定申告の時期が近づくと税務署などで相談窓口が開かれ、それらの窓口を利用することもできますので、分からないことがあれば面倒でも相談しに行って気持ちよく利益を確定しましょう。
まとめ
株式や投資信託で得られる配当期・分配金と譲渡益には税金がかかり、配当金・分配金は「配当所得」「利子取得」として源泉分離課税、譲渡益は「譲渡所得」として申告分離課税となります。
2016年1月より金融所得課税の一体化により、公社債投資信託と株式投資信託、株式とでは税法上はあまり違いがなくなり比較的シンプルにはなったと思います。
支払う税金を安くするための仕組みとして下記の仕組みがあり、NISA口座は下記の仕組みは利用できませんが、年間120万円の投資に対する配当金・分配金、譲渡益に関しては非課税となります。
- 損益通算
- 繰越控除
- 配当控除(損益通算と同時に利用することはできません)
これらの節税の仕組みを利用するには、確定申告が必ず必要となります。
確定申告をする必要がない条件は下記となります。(住民税の申告は必要です)
給与所得者で、
- 年収2,000万円未満
- 給与所得が1ヶ所のみ
- 給与所得以外の収入が20万円未満
もしくは、主婦や学生、個人事業主等で収入が38万円未満
また、証券会社の口座で「NISA口座」のみ、「源泉徴収あり特定口座」のみで運用している場合も確定申告は必要ありません。
ただ、下記の条件に当てはまる場合、確定申告をするとお得になる場合があるので、面倒でも確定申告を行うことをおすすめします。
- 株式や投資信託の売却で損失が出ていて、配当金・分配金を損益通算する場合
- 損益通算しても損失となっている場合
- 複数の証券会社間で損益通算したい場合
- 配当控除を受けたい場合
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